新教科「情報」授業アイデア集

 

ホームページを開設する一番の目的は、自分の考えや作品を多くの人に知ってもらう、見てもらうことだと思います。私の場合も例外ではなく毎晩睡眠時間を削ってまで更新を続けていくモチベーションはここから来ています。しかし、最近は授業の実践報告ばかりで、きちんと自分の考え、主張をまとめていませでしたので、ここにコラムとしてまとめてみようと思います。(柴田 功)
■第8話 予備実習は必ずやろう!
 現職教員等講習会で教科情報の免許を取った教員の基礎免許を調べると、割合の多い順に数学、理科、商業、工業、家庭になるかと思います(調査したわけはありませんが)。それぞれの基礎免許によって、教科情報のとらえ方が微妙に違うのは当然で、そんなところがこの教科のおもしろい部分であり、その分、講習会の受講生仲間で飲んだりすると刺激があって楽しいのかもしれません。それぞれの教科の立場でのご意見をお聞きしたいと思っておりますが、まずは、ここで理科の教員の立場で教科情報の考え方をひとつだけ言わせていただきます。
 理科には物理、化学、生物、地学に関係なく実験があり、その実験を生徒にやらせる前に必ず指導する教員が予備実験をします。実験によっては生徒にケガややけどをさせてしまうことがあるので、予備実験をすることは鉄則です。安全な実験であっても、思うような結果が出るように何度か予備実験をして授業に臨みます。このことは、教科情報にもいえて、生徒に出す課題は必ず指導する教員が予備実習するのが当然と思って、準備している訳です。しかし、そうではない教員が多いのには驚かされます。作ったこともないオリジナル名刺をいきなり生徒に指導したり、自分で開設もしていないホームページを生徒に作らせたり。やはり、教員は生徒に指導する前に見本を作るべきだと思います。これは基礎免許に関わらず当たり前だと思うのですが、いかがでしょうか?

2001,11,2


■第7話 教科「情報」は遊びだ!
 情報教育に携わる先生が、もし誰かに、「教科『情報』は遊びだ!」と言われたらどう思いますか?私は「うん、そうだ!」とも思うし、「何っているんだこの野郎!」とも思います。私自身、教科「情報」には遊び感覚の部分が多いにあるし、そういう部分が大切だと思いながら日々取り組んでいます。ですから、同じように情報教育に取り組んでいて、遊び心を大切にしている先生からそういう言葉を言われたなら、大いにうなずけることでしょう。ですが、情報教育の経験のない(あるいはワープロや表計算を教えた程度)の教員にそういわれたなら、「では、遊びではない教育とは何なのなのでしょうか?」と言い返したい。どの教科にも遊び感覚は大切で、むしろそういう感覚を大切にしながら授業を組み立て、教材を作り、生徒を引きつける授業を考えているのでないでしょうか?遊び感覚のない授業に生徒は魅力を感じることができるでしょうか?どの教科も自分の担当する教科に誇りをもって、その教科のおもしろさを伝えているのです。是非、互いの教科を尊重しあい、また、その教科の壁を超えた教科「情報」をあらゆる教科の教員で盛り上げていって欲しいと思います。

2001,10,24

■第6話 講習会を終えて
 2ヶ月に及ぶ平成13年度・新教科「情報」現職教員等講習会が無事に終わりました。受講生、講師の先生方、また、会場を提供していただいた8会場の関係者の皆様、本当にお疲れさまでした。昨日(8/31)の講師の打ち上げでは、15名の先生が集まり、8会場それぞれの苦労話を披露してくださいました。なによりも、講師の先生方の新教科「情報」にかける情熱には圧倒されてしまいます。そういう先生方とお酒を交わすと、情報科の未来、教育の未来、日本の未来まで話が発展してしまうこともあります。コンピューターネットワークが進み、電子メールや携帯電話でもコミュニケーションがとれる時代だからこそ、こういう飲み会の会話は心に残り、深い絆が生まれるような気がします。情報科の教員ならば、こういうコミュニケーションもうまくやっていきたいですね。

2001,9,1

■第5話 もっと出てこい!情報科教員のWebページ!
 平成13年度・新教科「情報」現職教員等講習会がスタートしましたが、全国的に講習会の規模が昨年度より拡大しているようです。神奈川県でも昨年度の4倍近い380数名の受講生が講習会に参加し、情報科の教員免許を取得することになります。今年度、講師スタッフとして初めて参加させていただきましたが、講習会の準備には相当な時間と苦労を費やしました。とくにプレゼンのスライドは100枚近くなり、完成したつもりが何度も作り直すなど、大変な手間がかかりました。昨年度は受講生でしたのでそんな講師の苦労もわからず、まったく受け身で受講していたことに深く反省してしまいました。
 この講習会の講師は文部科学省の伝達講師なのであまり主観をいれないように話しをしましたが、テキスト通りの説明の部分は多くの受講生にっとって大変眠たくなる説明になってしまったようです。私が受講生のときもそうでしたが、やはり講師のバックボーンに興味があり、その講師の先生の考えを聞くのが楽しみでしたので、私も最後のまとめの部分で自分の考えであることを前置きして少しだけ話しをしました。その部分では受講生の先生方がこちらに集中しているのがよくわかり緊張感が高まりましたが、そこでやはり出てしまった言葉は「情報科の教員ならばWebページを持とう」ということと「安易な素材集の利用より、素材作りにこだわろう」ということでこのコラムに書いてきたことでした。もしこのページを見た方がその話を聞いたならば「またかよ」と思ったに違いないと思いますが、是非、受講後にWebページ開設をめざして欲しいと思います。この夏(正式には来春ですが)、全国で数千人の情報科の教員が誕生するわけですから、情報科Webページ仲間が増えることを楽しみにしております。

2001,8,22


■第4話 Webページ=知識のさらけ出し?
 「能ある鷹は爪を隠す」といわれますが、Webページによる情報発信は「爪をさらけ出す行為」だと指摘されることがあります。(私自身そのようなことを言われたことがあります。)では、本当に「爪を隠す」ことは能あることなのでしょうか?たしかに、知ったかぶりしたり、知識を自慢したりする人は友達からも好かれませんし、そのような友人が欲しいとは思いません。では、Webページによる情報発信は知識をさらけ出し、嫌われる行為なのかというと、そんなことは有りません。なぜならば、その知識を必要とする人がそのページを求めてわざわざ訪れて来るわけなのですから、その情報が必要がなければ「戻る」ボタンをクリックするだけいいのです。つまり、その情報(知識)が相手に必要か、必要でないか関係なく押しつける行為が嫌われるのです。つまり、Webページによる情報発信は、その情報を必要としない人には「爪を隠した」状態であり、その情報を必要とした人にだけ「爪を見せる」行為なのです。私自身、問題解決の糸口として、必要な情報があるWebページを捜すことを日々していますし、今度は、私の経験を載せたWebページが誰かの問題解決の糸口になることもあります。ですから、なるべく多くの人が、それぞれの知識や経験をさらけ出して、より充実した情報源(www)になることを私は期待しております。知識や経験をどんどんさらけ出し、人類の共有財産にしていきましょう。

2001,8,2

■第3話 いろいろな手段で情報発信しよう!
 平成13年度・新教科「情報」現職教員等講習会がスタートしました。この暑い中、毎日毎日講師の話を聞いて、コンピュータに向かって演習するなんて、本当にご苦労様です。昨年度の受講生としてその苦労はよくわかります。私の場合は大変僭越ながら今年度、講師として参加するわけですが、受講生の時とは違ったプレッシャーを感じています。上手く90分間も話ができるか、こんな話では受講者が退屈しないか等といろいろなことを考えると寝られなくてしまいます。そんなときに役に立ちそうなのはこの「johoka.net」のWebページです。たぶん受講者はパワーポイントによるプレゼンテーションには飽きてきている頃でしょうし、日夜更新しているWebページを紹介することは、一度きりのプレゼンではなく受講後も見てもらえる可能性もあります。情報発信の手段は新聞や論文、出版物、放送、OHP、黒板、プレゼンテーションソフトなど沢山の方法があり、その目的に合った手段を選んで発信するわけです。ですから情報科の教員ならば、沢山の手段を身につけて、様々な方法で情報発信して欲しいものです。新教科「情報」現職教員等講習会では「情報発信」の演習としてパワーポイントを使った方法しかしませんが、「情報発信」の手段はたくさんあることを受講者、講師ともによく認識してして欲しいと思います。(文部科学省、県ともに「Webページによる情報発信」は受講者の個人レベルで勉強せよというスタンスらしい。)昨年度だけでも数千人の情報科教員が誕生したのに、Webページによる情報発信をしている情報科教員があまりに少ないのが気になります。なぜ、講習会の提出課題である授業指導案をHTML形式にしたのか、よく考えて欲しいと思います。生徒にWebページよる情報発信を指導する教員は、自らWebページによる情報発信をするべきなのです。

2001,7,24

■第2話 素材作りの楽しさを教えよう!
 コンピュータの使い方に慣れてくると、インターネットや雑誌の付録CD-ROMなどから著作権フリーの素材を見つけ、見栄えのする文書をいとも簡単に完成させ、まわりの人を驚かせるようになります。こんな時、コンピュータの素晴らしさをあらためて実感し、ますます腕を磨こうと思うことでしょう。そんな方には是非、次のステップとして素材づくりにチャレンジして欲しいと思います。そんなことを言うと「私は絵が下手で、、、」と、さっきまでの自信が一気に消えてしまったような反応がよく返ってきますが、素材作りもコンピュータを使うと簡単にできることを知って欲しいのです。学生時代、美術の成績が良くなかった人もコンピュータを道具にすると、必ず新しい自分の才能を発見します。発想はよかったけど絵の具を上手に塗れなかったために、今までよい評価をもらっていなかった人などは、コンピュータを道具にすることでメキメキと自分のアイデアを作品にしていけるかも知れません。 特に「情報」を指導する教員は、素材を作る楽しさを生徒に教える立場なのですから、自ら素材にこだわって欲しいのです。他人の作った素材を活用してばかりいると、情報モラルの「著作権」に関わる授業などでは「こうしてはダメ!ああしてもダメ!」というネガティブな話しばかりになってしまいがちですが、素材を作った立場に立つと、「自分の作品が法律で守られているんだ」というポジティブな話がようやくできるようになります。横断的・総合的な教科とされる「情報」を指導するのですから、何事にもチャレンジして行きましょう。

2001,7,11

■第1話 教科「情報」で「自己表現」を教えよう!
 最近、同業者との飲み会でよく教科「情報」のことが話題に出ます。2年後に新しい教科が現場に入り込んでくるのですから当然ではあります。教科「情報」が始まることへの不安や期待、問題点など色々な意見があるなかで、こんな否定的な意見を耳にしました。「パソコンという箱の操作を教えることが教育か?」、「パソコンを教えるための教科はいらない」、「コンピュータが進歩すれば教科『情報』の役割は終わる」などです。別に文部科学省に肩入れするつもりはありませんが、新教科「情報」に近い授業を6年間やってきた立場から、その意見には熱く反論してしてしまいました。その意見を言った先生には、情報の授業を、ワープロ&表計算、プログラミングを教えるものだというイメージしかなく、自己表現の手段として、道具としてのコンピュータのイメージがあまりないような感じを受けました。某先生の「じゃあ、情報は何を教える教科なの?」という質問にこう答えました。私「生きがいを教えるんです。」 某先生「?」 私「自分の存在を多くの人が認めてくれること、自分を必要とする人がたくさんいるということ、これは生きがいそのものではありませんか。」今までは自分の考えを広く主張するには本を出版する、新聞に投稿するなどかなり限られた手段しかなく、それもコストがかかったり、時間や手間がかかったりしていました。しかしコンピュータやネットワークの革命的な発達で、簡単にしかも低コストで自己表現をする手段を私たちは手に入れました。生徒たちに自己表現の方法を教えることは教育現場で最も大切なことのひとつではないでしょうか?情報の免許を取ることに消極的な「理科」「数学」などの教科の先生方には是非、この自己表現をする楽しさを味わって欲しい。教科「情報」への批判はコンピュータやネットワークを道具にした自己表現を経験してからでも遅くはありません。

2001,7,1

 

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